会社運営の在り方


1. 制度と運用

郷に入っては、郷に従え”(When in Roma, do as the Roman's do.)という諺がありますが、例えば、 日本にいれば日本の法律や商習慣がありこれを無視しては、商売は成り立たちません。つまり、国家誕生から始まってもの凄い時間をかけて出来上がって来た制度(習慣としても良い)であるため簡単に覆すことは出来ず、その国家においては絶対に守らなければならないモラル(ルール)であることを意味しています。このことは、なにも日本に限ってのものではなく、米国も中国もはたまた欧州でも同じことです。

 ここではその要(かなめ)である3つのキーワードを理解して頂きたい。つまり、現地の言葉でしゃべる各地方毎の文化を受け入れる”およルールや慣習というものを順守し、迅速に対応することの重大さを知ることが肝要です。

また、今後の会社運営で最も大事なことは、自己の才能をあらゆる方面に使えるように努力する(全てがトップになることは出来ませんが、人に負けない意気込みが重要です)ことにあります。また、自分が知り得た情報は個人のものとして頭の中や机・戸棚の中などにしまっておくのではなく、みんなが共有して使えるよう公開することが重要な行為となります。更に、自分が技術屋だから他のことは出来ない、判らないというのではなく、市場に飛び出し、世の中は何を求めているのか?どうすれば顧客が欲しいという商品を提供できるのか?など違った切り口から常に見ることが出来るようになり、かつまた、迅速に対応出来るようになることではないでしょうか。

 従って、技術屋は営業と関係ないあるいはその逆などと会社に閉じこもっていたら何も見えませんし、自社で開発した良い商品であっても、だれも見向きもしない顧客ニーズから乖離したものになってしまいます。(従って、当然売れない物となります) だからこそ、営業マンも技術屋も経営者も三位一体となって個々のバラバラな力を結集し、ベクトルを揃えて大きな原動力(資源)を生み出すことが非常に大切なこととなります。

 会社を繁栄させることは、風が吹くと、桶屋が儲かるというようにその基本となる総合的な資源(Resourceのこと)を財産として保有出来るかどうかにあります。つまり、上述の諺の意味するところは、風(保有技術やノウハウなど)が現象を変化させ(桶という木材を乾燥させ)、その結果(木材が縮むことで隙間が出来て水漏れがする)として別の効力が生じてきて(桶屋に修理を出す)、最終的には利益(商売が繁盛して儲かる)をもたらすことを指します。

このことをしっかりと理解して運用していかないとやがて会社は老朽化して崩壊して行くことになります。これを救う道は、全員が一致団結して、どんな技術でも受け入れて("No"と言わない)、会社の信頼を築き上げて行くしかありません。これには、技術やノウハウなどの資源を個人が所有するのではなく、会社の全員が使える形で共有化し、無駄な開発をやめ、無駄な出費を押さえることが必要であることを意味しているのです。      

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2. 付加価値とキャッシュフロー

1)  付加価値(VA(Value Analysis)VE(Value Engineering)

VFC

  V:価値(Value )F:機能(Function)C:価格(Cost)

商品の付加価値(買い手が欲しがる物)を上げるためには、2つの要素があり、その1つは、機能の充実と向上です。これは、ユーザーが欲しがるものには、希少価値があったり、ステータスシンボル(ブランドイメージ)があったり何らかの魅力が必要となります。

これは、技術を提供する側の論理としても非常に重要です。

もう一方は、価格が安いことです。当然のことながら、同じ商品なら安い方が良いに決まっています。従って、どこよりも安い商品を開発することが会社の生き残りを決める大きな要因でもあります。

 2) 原価構成

 次の簡単な式について考察して(解いて)見ます。

一般企業においては、原価構成の3要素(原価、売値、利益)の中で原価を創出することが経営の基盤であり、最終的には、大きな利益を得ることによって株主や社員に還元することが目的となっています。(資本主義社会の大原則)

 売値=原価+利益・・・一般式(F1

 原価=売値-利益・・・一般式の変形 (F2)

 利益=売値-原価・・・一般式の変形 (F3)

結論からいいますと、あるべき姿(理想状態)は、F3F2F1の順となります。

F1:コストダウン(C/D)もせず業者の良い値で購入したものを使い、会社が欲しいだけの利益を上乗せしたら、売値は非常に高い(競争力のない)ものになってしまい会社は儲からないだけでなく、倒産の危機すら招いてしまう結果になりかねません。(単純積上型)

F2:原価が目標通りに下がらないので、利益をぎりぎり(限界利益)まで下げて、売値を競合他社並みに設定しようとすると、商品はそこそこ売れますが会社はあまり儲からない構図となります。(原価維持型)

F3:売値を競合他社に負けないように設定するために、原価を徹底的に抑えることによって、会社の目標とする一定の利益が確保出来て、理想的な会社経営が出来るようになります。(利益確保型)

3) コスト意識

一般に、商品のコストは先に説明しました通り、世間の常識に落ち着いた線で設定されています。勿論、世界の通貨の力が常に変動しており、輸出を考慮した場合は円高や円安といった変化で経済状態も変わりますので、一定の枠内で価格が守られていても経営に対する見方がまるっきり変わってしまうものもあります。

 従って、市場競争を勝ち抜くためには、コストを無視して語ることは出来ません。

では、どうやってコスト意識を高めるかといいますと、通常の仕事の中で考えていく必要があります。

a.より迅速に市場価格を知る(見極める)

カタログ、新聞、ネット情報などといった情報メディアからいつもあたらしいコスト情報を把握し、コスト・コントロールすることです。

b.理論に基づくコストダウン手法を活用する

[キーワード] 20-8020:80方式、信頼性とコスト

 通常コストダウンをする場合、効率的に行うために20-80方式の手法を使って実現します。つまり、20%の部品点数で80%のコストを占めているもの(一般的な傾向)を探してコストダウンすることです。こうすることによって、僅かな労力で大きな成果を得ることが出来ます。一般的には、このような手法に当てはまる実例が沢山存在していますので、この手法を使ってコストダウンする企業が多く存在します。

 次に、信頼性は製品の品質を決める尺度として大きなウエイトを占めています。例えば、故障のしない装置を開発出来たら顧客は一切のメンテナンスをすることなくその装置を維持できます。従って、余分なメンテナンス契約をする必要がなく、それだけ安い買い物をしたことになります。逆にメーカ側にとっても専門のメンテマン(保守要員)を会社に抱えて置く必要はなく、従って経費も浮いてメリットが出ます。実際、故障のしない装置(ソフトも同じ)は実在しないので、企業はいかにして故障を低減出来るかを研究しています(安全・安心の基本)。

そのため、費用も莫大にかかり製品コストが上がる要因になっています。ところが、世界で最も信頼性を要求される軍事用機器類や宇宙船(ロケット)等はもの凄く信頼性を要求されますが、ペンタゴンやNASAの報告によると信頼性を上げてもまだコストダウンが出来るといっていることです。勿論、これらの具体的な方法は、秘密保持のため情報公開されていませんが、結局、企業が固有な技術としてこれらの手法やノウハウを持てば、莫大な利益を手にすることも可能であるということを示唆しています。

  結論として、どんな場合でも、どんな会社でもコストダウンを行うことによって売上げを伸ばして利益の増大を図る戦略が立てられ、実行に移せるようにならなくてはなりません。

c.トータル・コストで考える

コストというと、直ぐに製造コストのみを考えてしまいますが、そうでは決してありません。部品を発注してから受け入れ生産検査出荷がいわゆる工場での実コストになりますが、この他にもデザイン、梱包形態、物流、マニュアル、補給部品、メンテナンスなど製造コスト以外にも金のかかることは当たり前のことです。従って、企業の利益に貢献するためにはこれらの副次的な諸経費を如何に圧縮するかに掛かってきます。この意識を持つことが企業反映への道であり、トータル的なコスト管理となります。

 製品サイクルとは、構想段階から生産という形になり、やがて廃棄されるまでのいわば製品の一生をいいます。つまり、

  企画見積注文開発生産検査納入アフタサービス廃棄

というサイクルで回っているのです。

このサイクルの中で特にハードウェアに関しては、産業廃棄物をどう処理出来るか、エコ(環境保全)をどこまで考えたかが大きな社会問題となっており、ここまで突っ込んだ対策が出来なければなりません。

また、製品の寿命(生産されてから廃棄されるまでの時間)を考えて設計することも重要なファクタ(要因)となります。

d.ロット・メリットを適用する

例えば、IC用の版下が100万円したとします。この版下を使用して100万個生産すれば1個当たりたったの1円となり、製品のコストを左右するものではなくなります(薄まってしまう)。しかし、100個しか作らないとしたら状況は一変し、製品単価は1万円アップしてしまいます。

我々が扱う量は、この例のように1ロット当たりの数量はほとんど期待できませんが、それでも1個より10個、10個より100個と生産量を上げられる工夫をすれば、顧客にそれ程負担をかけず製品のコストを設定出来ます。

また、コストダウンによって利益を出せれば、何も投資することなく純利益を得ることになり製品を売って営業利益を上げることに比べると、遙かに高い付加価値を生み出すことになります(利益を得るには多くの売上が必要となります)。

e.標準化、共通化する   

この効果は、企業にとって莫大な利益に貢献していることになります。何故かといいますと、ハードウェアであれ、ソフトウェアであれ開発にかかる費用は最もコストに占めるウエイトがかかっているからです。従って、ある開発を行う場合に、自社にある蓄積技術がそのまま使えれば、あるいは少しの手直しで使用できるならば、開発コストを多くかけずに安いコストで製品を製造することができます。

世の中、こんなに上手い話はなく、このことが実現出来たら会社は儲かってしょうがないでしょう。

会社が儲かるためには、標準化や共通化が必要であり、受注の度に新しく設計・開発していたのではお金と時間ばかりかかって効率が悪くなるkとは間違いありません。先に説明しました通り、これでは桶屋が儲かるとは言えなくなってしまいます。

従って、仕事をする際は会社全が一丸となり、苦労して開発してきた知識やノウハウを出し合って、標準化・共通化することにより効率的かつ高信頼な製品が開発できるはずです。

何故、高信頼に繋がるかといいますと、既に過去の実績からその信頼度は実証されており、それを適用することで目的にあった信頼度要求に答えられるからです。

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4) キャッシュフォロー

株式会社とは、元々投資家(社長が自ら出資する場合もあります)が資金を出してその会社の株を保有する仕組みであるため、株主(投資家)のためにあるといっても過言ではありません。つまり、株主あっての会社なのですから株主(投資家)が儲かる構図をどのようにして構築するかにかかっています。ではどうやったら株主ありきの形態が作れるかといいますと、やはりキャッシュフローをなくしては語れません。

一言いうと、キャッシュフローは会社の総収入と総支出のバランスがどうなっているのか?途中で目的でない方向に流出(流用)したり、特定の人や組織にだけ使われないように注意深く管理されて、会社経営が正しく運用されているのかどうかを判断する尺度となります。

別の見方をすれば、キャッシュフローを上手く回さなければ無駄な資金がどこかに消えて行くか資金が停滞して有効なリターンを期待出来ないことになります。

会社は、利益を生むために資金を用意して開発し、その結果として売れる製品を産みだしてまた次の利益を生み出してゆきます。このサイクルをぐるぐる回すことで会社は成長し、ついには大企業へと発展してゆくのです。この過程で得られた利益こそ株主に還元され双方がこの利益を共有して初めて、達成感を味わえるものです。

会社が開発や生産を行う時に必要なのが資金であり、これを無駄なく流していく状態がキャッシュフローです。つまり、企業はこのキャッシュフローを正しく管理して行くことが生命線であり、会社繁栄の鍵を握るのです。従って、資金は途中で消えて無くなったり、停滞しないようにその流れを見極めてゆく必要があります。

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3. 開発管理の実践

会社として開発管理する要素は次の4つです。

1) 品質 (Quality: Q)

ソフトでもハードでも納品するものが、顧客の要求する品質(出来映え)と異なれば問題となり、検収はおろか代金を支払われなくなることさえあります。この状態が続けば、顧客は二度と注文を出さなくなります。ですから、製品の信頼性を上げ、不具合発生の抑制を行うことは会社の信用を高める行為といえます。品質なくして、製品はあり得ないし、高いお金を稼ぐことも出来なくなります。

ですから、品質管理の原点に立ち返って製品の品質向上を成し遂げる必要があるのです。


2) 価格 (Cost: C)

 価格は、実質的に物品の売買を司る上で重要なファクタです。顧客から見れば安いことにこしたことはなく、反対に、売る側から見れば高くなった方が良い筈です。では、この辺の折り合いをどこでつければ良いのかといいますと、競合他社との整合性を持つことです。当然、相手より高い場合は、機能(付加価値)を上げて勝負するか、値引きをして対抗するしかありません。このためには、徹底した合理化により、生産性を上げ利益を追求する手段を磨き上げること以外に方策はないものと考えます。このために、他社には負けない血のにじむような努力を怠らず新しい手段・手法を確立することになるのです。


3) 納期(Delivery: D)

一言でいうと、納期優先で望むことが大切です(勿論、仕様変更など当社の理由でない納期遅延は除きます)。どんなに難しい問題に突き当たっても顧客と約束した納期を守ることは絶対であり、言い訳の効かないものです。つまり、顧客が立てた日程(納期)を守れないと相手に莫大な損害を与える結果になりかねません。場合によっては(契約書の締結を行った時など)、相手から損害賠償を求められることがありますので十分注意すべきです。

従って、これらの問題に遭遇しないように事前に仕様書を書き、それに基づき顧客からの承認を得、再度仕様内容を確認した上で、どんな技術で、何人かけて、いつまでに完了するかを見積もらなければなりません。


4) 技術 (Technical:T)

ここでいう技術とは、会社が保有している固有技術と個人が持っている知見(特殊技術)の2つを指します。つまり、知見の集積、統合が固有技術となり会社として大きな能力を発揮出来るのです。ですから、先ず第1に実行しなければならないことは、常に自己の研鑽(切磋琢磨)を怠らないことであり、競合他社には負けない技術力を醸成することです。

技術レベルを高揚させるために、自分の志向する専門分野だけでなく、その周辺技術や一見関連がないと思われる分野にも興味を持ち学び取ることです。

そのためには、専門書を読んだり専門学校に通ったりすることが一方法ではありますが、知識を持った人と接触を持ちその中から学び取ったり、インターネットなどの手段をフル回転させ、いつも新しい技術情報を得ることも必要となることがあります。

これらが管理の基本(これを、QCDT管理とよびます)となっています。QCDT管理で大事なことは、競合他社に打ち勝つために、この4要素をしっかりと達成出来る体制を築き上げることです。一度受注した顧客から永続的に仕事を頂くためにはこのQCDTが他社より優れていることを認知されることに他ならなりません。

[注]ここでいう技術開発とは、人間産業生活などにおいて、それを一層有効な形で運営をできるための技術を獲得することを目的として、それを成し遂げるための組織的な努力のことを言います。技術開発を行う方法というのは、科学においての知識法則を基盤として、それを社会においてのニーズに当てはまっている製品や製法を発明するということへと導くということです。

そのためには発明が行われる新製品のイメージを明確にした上で、それが社会において受け入れられるための実用化を行っていくまでの過程までも技術開発において行われる事柄です。                                              

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4. 管理(Management)と品質(Quality)

管理は、資源(リソース=Resource)の有効活用を果たすという意味で、「人」「物」「金」および「技術」を如何に有効に活用するかということがポイントとなります。つまり、管理は、管理者(マネージャ=Manager)の役割となっていますが、個人や会社の能力を駆使してその役割を果たせる環境作りといえでしょう。ですから、いわゆる ”No control” になってしまうと人物金の有効活用が果たせず、ついには会社は潰れてしまうことになります。

従って、管理者はこれらの管理対象(人、物、金+技術)をしっかりと管理する重要性が生まれます。そのために、あらゆる管理技術を身に付け、部下の指導育成や会社の企画・施策作りあるいは企業の幹部として優れた運営・管理が出来なければなりません。逆に、これが出来ない人は管理者にはなれません。

次に、品質について考察しますが、品質の善し悪しを考える時、次の3つを念頭に入れて対応することをお勧めします。

 1) 製品企画の適否

 2) 設計の品質

 3) 製造・検査の品質

品質管理は、これら品質に関する情報を次工程にフィードバックすることによって品質を向上させることを目的とするもので、品質に関する情報としては、苦情(クレーム)や検査データなどがあります。

次に、品質管理のサイクルを回すテクニックを活用して、信頼性の高い製品を開発する管理手法を示します。これは、品質の基本理念である、

  P(Plan=計画立案)→D(Do=実行)→C(Check=出来たものの検査)→A(Act=結果のフィードバック)→P,D,C,A・・・と何回もまわすことにあります(これをスパイラルアップといいます)。

この概念に類似したもので、次に示すように、プロセスを簡略してP-D-Sという3つの段階を踏むこともあります。

 PlanningP:計画)→ DoingD:実行)→ SeeingS:検討)

品質管理(QC = Quality Control)の道具は色々ありますが、世間一般で採用されている「統計的品質管理」といわれる概念を武器にして科学的なアプローチを行い、品質向上させる手法を採用することにします。

<統計的品質管理>

製品の信頼性は一般的に見て大量に生産されたもの程高いといわれています。これは製品を大量に作る過程で不良が発生し、それを1つ1つ潰していくことによって製品の信頼性に影響する阻害因子が徐々に取り除かれてゆき、安定した製造方法が確立することよって均一性のある製品が生産されるようになるからです。逆にいえば、製品が均一性を欠くときは、工程の中で何かの変化が起こったことを示唆しており、この変化をもとに戻すか改善するしかありません。このことによって少なくとも製品の信頼性は確実に向上できます。このような目的に対して品質上の均一性を欠いていることを検出するために、検査や試験の記録を如何に集め、如何に整理し、更に如何に解析するかの方法を与えるのが、管理図です。統計的品質管理はこの管理図を利用して、統計的に品質を管理し、欠陥を取り除く手法です。

管理図には、製品の品質に関係する測定値、すなわち、

 1)特性値の平均値(カタヨリ)と範囲(バラツキ)(X-R管理図)

 2)製品の不良率(不良率pの管理図)

 3)サンプル中の不良箇所の数(欠陥数cの管理図)

  などを記録します。これらの値は、サンプルやロットを次々と測定してみると、必ず変動するものですが、このような変動は次のいずれかに分類出来ます。

1)原因を調べる必要のないもの(偶然に起こった変動)

2)可避原因(Assignable Cause) の存在を示す意味のある変動(必然性のある原因)

  この意味ある変動は、トラブルの原因があることを示すもので、よく検証してみることが必要であって、もしできることならば製造工程を修正し改善しなければならないものです。これ以上の詳細については、専門書に譲りますので必要に応じ勉強して下さい。

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5. 信頼度設計

諸悪の根源は設計にありといわれていますが、逆にいうとハード開発者が線を一本書いた瞬間あるいいはソフト開発者がプログラムを一行書いた瞬間にコストや信頼性などかなり多くの特性が決まってしまいます。だから開発者は、設計を始める前に十分な検討を行い決められた日程の下に業務を進めていかなければなりません。

では、信頼度設計とは何かというと、電子機器の規模(或いはソフトウェアの命令数に置き換えても良い)が次第に大きくなり、1つのシステムに含まれる部品点数が膨大になると、この部品の品質が良好であり、機器の製造に欠陥がなくとも、完成した機器の故障率が大きくなり、実用上問題となるレベルに至ることがあます。

これを解決するためにはどうしても設計にまで遡って対策を立てて開発する必要がありました。このようなやり方で設計することを信頼度設計といいますが、信頼度設計は設計段階において将来発生すると予想される不良への予測を科学的にアプローチし、その欠陥を事前に取り除くための手法を確立したものです。

ここでは、開発者がどうした項目に着目して開発(設計)していったら良いかを検討します。

 1) ハードウェア

機器を取り巻く考慮すべき様々なパラメータ(要因)を設計の中へ取り込んで、例えば、ワーストケースでの信頼性や安全性を割り出し信頼度の高い設計を行うことです。すなわち、機器の使用環境条件や部品の持つ特性を知って、問題となる要因を潰しながら設計することです。

<設計に実用されているパラメータ解析法>

a.総合特性における許容差の問題

・部品定数の許容差と総合特性の許容差の関係

・部品定数の公称値から計算した総合特性の値と総合特性の公称値との関係

b.試作品の試験結果より製造ロットの特性の推定

c.ドリフトの解析

・製造時におけるドリフト

部品の機器への総合条件の差による定数のドリフト、測定条件と使用条件との差によるドリフト、漂遊定数など

・使用時におけるドリフト

 温度係数などによる変化

・使用時における非可逆的ドリフト

 経年変化、湿度による変化

d.ストレスに対する安全率

e.部品定数のバラツキの影響を考慮した回路設計

f.ノイズ(飛来ノイズ、熱雑音、電源ノイズなど)や不要輻射などの電気的雑音による影響

g.ストレス(サーマルショックなど)やクロストークによる影響

h.最大定格と低減率を考慮した設計

i.安全率や冗長度を考慮した設計

2) ソフトウェア

  ハードウェアとの違いは、実体のないものでありますのでソフトそのものは物理的な故障がないかわり、要求仕様に対する絶対的な正確度や信頼度が求められます。

a.ソフトウェアそのもの(プロダクト)の信頼性確立

b.ソフトウェアに関連するプロセスの信頼性確立

c.人間工学的アプローチ

d.使用環境やその条件への対応

e.メディアによる故障(破損、欠陥など)への対策

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6. 売上への貢献策

最終のまとめとして、商売上の心得を説明して終わりとします。

この内容は、私感的要因が多分に含まれていますので、参考になる部分だけ取り入れて自分のシナリオ(商売道具)を作り上げて頂きたい。

・技術営業

 近年、開発商品は技術的に高度さを増して来ました。このような製品を扱う場合、従来の売り方だけでは顧客を納得させ、購買力を上げるまでにはなりません。やはりかなりの専門知識を持ち、製品の機能・性能をアピール出来るようでなければなりません。 

特に、技術レベルの高い商品を買って頂く場合はそうです。

 従って、必要に応じ技術者も販売に協力しなければなりませんし、営業マンはある程度の技術知識を身に付けなければなりません。この役割を果たすのが技術営業であり、世間一般では開発技術者が担当している企業が多く存在しています。

・提案型の開発

委託開発や技術派遣を主体業務にしている会社でも、顧客の要求仕様に関する開発を行っていただけだとどうしても受け身になり、いったん不況に晒されますと注文が減少してしまいます。顧客が要求する具体的な仕様を出せない場合もありますので取引先の情報を良く把握して、今何をしたら良いかをタイミングよく提案することです。また、都道府県などの融資制度を利用するため、適当とするテーマを考えて提案することも重要な行為であると考えます。

自社ブランドの開発とまでは行かないまでも、提案型によって自社の特徴を出せる製品を開発できる環境作りも重要な施策となることは間違いありません。

・情報収集と提供

最新情報のインプットとアウトプットは非常に大切で、いつもなんらかの形で顧客が必要とする情報を手に入れることです。それを手段として顧客にジャストインで提供出来れば、それなりの信頼を得、いずれビジネスに繋がるチャンスがやってくるものと確信しています。ただし、企業秘密に関することは、知り得たものの取扱を間違わないことは勿論のこと、自社の技術に関しても注意を払い、どの情報をどのタイミングで出すかを良く考えることです。つまり、自社の頭脳流出や産業スパイ的行動は避けなければなりません。

常に、知的財産や個人情報ほど流出しやすく、社会問題を引き起こすものですから何重にも秘密保持の対策を講じることが大切です。

・実績と信頼

過去から現在に至るまでの実績を積み上げることこそお互いの連帯感を導き、取引の永続性が得られます。では、なにがそうさせるかと言いますと、たゆまぬ努力と誠意に満ちた行動を取ることによって、初めて顧客から信頼を勝ち取ることができるです。

このことは、やがて新たなビジネスチャンスに繋がり、会社間相互で儲けることが出来るキッカケとなり得ます。つまり、信頼を得ることにより、いち早くその仕事を発注して頂ける近道となるからです。

従って、既存会社にしても新規会社にしても、キーマンとのコンタクトを絶やさず、焦らずに付き合っていければ、そこに必ずビジネスチャンスが生まれます。

・発展性

  企業間の取引上重要なことの1つに、その会社は今後どのような展望(ビジョン)で発展させて行くのかということです。現在の取引で満足出来ても、将来の夢や施策を語れなくては魅力が半減してしまいます。裏を返せば、会社は自社の魅力溢れる姿を具体的に見せることによって、それに賭けてくれるものです。ですから、特に請け負い型の展開をすればするほど、自社の特徴をアピールしきれず受注に繋がらない場合が発生します。

従って、自社の施策や特徴などを顧客に説明でき、将来の自社の発展性を知って貰った上で、取引相手からある程度の期待感を持って頂くことが会社の発展に貢献出来る近道であると確信します。

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